2013年4月7日日曜日

連載「ゲーマーのための読書案内」第57回:『「海洋国家」日本の戦後史』_1

 そろそろお盆休み突入ということは「終戦記念日」もまた,近いという勘定になる。ジョン?ダワー『敗北を抱きしめて』の登場で,国内論壇が突如,まっとうな戦後史叙述の空白に気づかされてしまったという経緯については,どこかで書いた憶えがある。そうした事態への対応として,日本でも加藤典洋『敗戦後論』や小熊英二『と』といった,まとまった仕事が世に出ているので,興味のある方はそれぞれご一読いただきたいところだ。  そんな大上段な前振りを受けつつ今回紹介するのは,宮城大蔵氏の『「海洋国家」日本の戦後史』である。日本の戦後柲膝ⅴ弗⑼饨护蛑鳏暑}材として,ミリタリーパワーと冷戦構造に背を向けた日本の姿勢を,詳細かつ前向きに捉え返した好著といえよう。全体の主軸となるのは,対インドネシア外交だ。  日本の戦後アジア外交といえば,DQ10 RMT,日中/日韓(含,北朝鮮)関係こそ焦点と思われがちだ。だが,実のところ共産中国およびアメリカ陣営の最先鋒たる韓国とは,まず冷戦構造ありきの外交以外に,オプションはなかったのである。それゆえに生じた歪み,軋みも十分論ずるに足る題材ではあるものの,こと柲膝ⅴ弗ⅳ摔い剖聭Bは少々異なる。  この本は,ドラクエ10 RMT,バンドン会議(1955年)に強く表れたアジア諸国の意思,つまり,植民地体制の打破と完全な独立の達成,そして冷戦構造から距離を置きたいという指向が,戦後日本の経済復興(つまり,政治/軍事も含めた大国への回帰ではない)路線とうまく噛み合った様子を,興味深い周辺エピソードも盛り込みつつ解説していく。  例えば,軍部とインドネシア共産党という,対立する二勢力のバランスの上に立っていたスカルノ革命独裁政権を,アメリカはその親共産主義的姿勢を理由に打倒しようと,非公式の介入を試みる(1958年)ものの,これはまたたく間にバレて,いろいろ気まずいことになる。  一方,旧宗主国イギリスのお声掛かりで成立しようとしていたマレーシアの承認/否認をめぐって,その当時インドネシアは旧イギリス領から経済封鎖を受けており,このままでは本当に経済的理由からソビエト陣営に付きかねないと危惧された。  そこでインドネシアとの間に戦後賠償問題を抱えていた日本が乗り出して,インドネシアで深刻に不足していた船舶を,賠償の一環として供給(1959年),からくもインドネシアの共産化を防ぐといった場面が,時期を追って叙述されている。  アメリカや中国,さらにはソビエトから見たとき,日本はれっきとしたアメリカ陣営の一大国であった
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